2014年9月2日火曜日

放射線の基礎知識【2】

2-3.γ線・X線
 極論すれば、本質的にはどちらも同じです。どちらも電磁波ですから。では、その区別は何なのかと言いますと、発生要因です。原子核から発生するのがγ線で、電子から発生するのがX線と呼ばれます。辞書によっては「高エネルギーなのがγ線、低エネルギーなのがX線」と書いてあるのもありますが、誤りです。確かに、γ線の方が高エネルギーなことが多いですが、その上下関係は絶対ではありません。さて、実用的な話をしますと、どちらも電磁波であり本質的には変わらないので、遮蔽方法も同じです。鉛などの重い(原子番号=電子数の多い)元素で出来た分厚い壁が必要です。鉛の他には鉄が使われることもあります。電磁波なので、粒子線よりも止めにくい性質であると言えます。β線の項で先述したように、相互作用でβ線を生み出すこともあります。
2-4.中性子線
 これは粒子線ですが、電荷を持たない為、非常に止めにくいです。電荷を持つα線やβ線と違い、物質の原子核と衝突しないと止まりません。軽い原子核との衝突でエネルギーを大きく失うので、水素を使うのが基本です。その為、水やコンクリートで遮蔽します。また、原子炉では熱中性子(エネルギーがそう大きくない中性子)を使いますが、それはホウ素などの熱中性子吸収材に吸収されるので、ホウ素を混ぜるのも場合によっては有効です。

3.放射線の単位
 放射線の単位としては、Bq(ベクレル)、Gy(グレイ)、Sv(シーベルト)の3つがあります。ベクレルは「ある物体が1秒間に出す放射線の数」のことです。放射線を出すのは基本的に原子であり、原子は極めて小さく数が多いので、ベクレルの数値は必然的に大きくなります。例えば、人体は天然のカリウム40だけから4000Bqの放射能を持つと言われています。他の核種を含めればもっと多いです。グレイは、放射線を出す物質ではなく放射線を浴びる物質に注目します。早い話が「浴びた量」です。定義としては「放射線を浴びた物質が1kg当たり、放射線によって何J(ジュール)のエネルギーを吸収したか」です。最後にシーベルトですが、これはグレイの亜種と言えるでしょう。生物への放射線による影響は単純な吸収エネルギー量ではなく、放射線の種類によっても違うので、その重み付けをしようということです。放射線の管理では、シーベルトで表される物理量として実効線量と等価線量があり、両者は違う概念なのですが、どちらも同じシーベルトなので間違え易いです。また、シーベルトという単位はどちらかと言うと「全身に浴びた放射線の総量」ではなく「身体1kg当たりに浴びた放射線の量」というイメージなので、痩せた人と太った人だと同じ場所にいても被曝量は異なるかもしれません。ここもイメージしづらいのですが、気を付けましょう。

次回以降、もし書くとしたら人体影響の種類の違いなどを先に書き、放射線の原理などは後回しにしようと思っています。

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