2015年7月12日日曜日

SSC輪読会【3】

今日中にまとめないと書き忘れるのが自明なので書く。

①創発や自己組織化臨界現象は有名だが、HOTは有名でない
 「冪分布=自己組織化臨界=単純な個々の構成要素の相互作用」という短絡的発想は社会シミュレーション系の人にも多くいるのだということが判明。HOT(highly optimized tolerance、高度に最適化された耐性)という全く異なるメカニズムも冪分布を作ることには注意を払っておきたい。臨界が部分の詳細に依存せず、単純な内部構造、中央コントロールなしの創発、フラクタルと親和的なのに対して、耐性は部分の詳細に依存し、複雑な内部構造、システム全体での外乱最小化に親和的である。人間の体温や機械の安全性等、複雑な内部構造から単純な出力を得るというイメージ。

②学問の細分化が進み、「同じ内容」が異なる学問名として別々に研究されている
 社会認知科学という分野では、「物を持つことで、人間の認知は純粋な彼本人の身体にとどまらなくなる」という発想をするらしい。分散認知という概念でも、「Aさんと話していた、Bという環境に置かれていたからこそ思い出せる、考えることができるということがある。これは、認知が環境中に分散していると考えることができる」という発想をする。社会認知科学は恐らく社会系、分散認知は工学系だと思うが、両者はほぼ同一ではなかろうか。このような細分化が進むと、先行研究を適切に調べることができなくなり、各所で「車輪の再発明」が行われるのではないか。

③人間関係はネットワークでは表し切れない
 AさんBさんCさん全員が集まって初めて成立するコミュニケーションは、A-B、B-C、C-Aの3つのコミュニケーションをバラバラに行っていても成立しない。例えば、一対一の勉強会を複数回行っても、複数人の勉強会一回の内容を包含するかは疑問である。これに関しては、工学系だけでなく社会学系にも解決を考えている人がいるようである。

④チューリングテストの判定者が人間だけで良いのか
 もし「人間には分からないが、機械や宇宙人にはハッキリと分かるような人間と機械の違い」というものが存在するのなら、人間と機械の類似性の判定者が人間しかいない現行のチューリングテストは何なのか。「人間かどうかの判定には、同族である人間だけが判断しても構わない」という発想だと、犬が鏡に移った自分を本物の犬だと思って吠えかかるとき、鏡はチューリングテスト合格ということになる。

⑤ODDプロトコル
 便利。ただ、必要な要素を個別に挙げているが、それらの関係性や時系列が分かりにくい。ネットワークで言えば、ノードだけあってリンクがないイメージ。しかし、必要な要素の洗い出しには便利。コミュニケーションの手段。