2014年12月31日水曜日

個人的な学問の定義

私が参加している雑誌(同人誌?)[1]の企画に「自分の関わる学問分野を、自分なりに定義してみよう」という企画があった[2]ので、それに投稿する原稿を公開します。
この企画には誰でも自由に参加出来るらしいので、興味ある方は是非。
工学と経済物理と統計力学について、それが何なのか200字で述べました。

工学
 工学とは、一般には機械や電気等の個別のモノづくり技法の総称だと思われているが、そうではない。実際には、人間が新しいアイデアを考え、人間の生活を改善していく行為全般を指すものである。人類が始まって以降、火や言葉の発明から現代の情報の整理・創造というITに至るまで全てが工学であると言えよう。従って、重要なのは個別分野の具体的知識というよりも、技術者としての倫理、コミュニケーション技法、発想技法である。

経済物理
 経済物理とは、主にデータ解析とコンピュータシミュレーションを用いて、金融市場等の経済現象を実証的に研究する学問である。誤解され易いが、物理学の手法をそのまま経済学に持ち込むのではない。重要なのは、データ解析の結果と関係者へのフィールドワークから得られた人間の感性を、シミュレーションによって整合性を保ちつつ統合することである。限定合理性や個々人の多様性が経済へどう影響するかを調べることに強みがある。

統計力学
 統計力学は、熱現象をミクロな分子モデルから説明する学問ではない。もっと普遍的であり、“ものを数える”行為全ての基礎概念になり得る。その証拠に、ネットワーク理論や自己組織化臨界現象、相関関数等の概念は物理現象に限らず、今や生物や社会現象にも応用されている。重要なのは、起こり得るシナリオをどうすれば一つ一つ数え上げることが出来るか、その基準、本質的な特徴量を問題毎に考えることである。


参考文献